(目的)
第1条 この条例は、八王子市長(以下「市長」という。)及び八王子市議会議員(以下「議員」という。)が、政治倫理の確立と政治腐敗の防止を図り、主権者である市民の信託に応え、いやしくもその権限又は地位による影響力を不正に行使して自己又は特定の者の利益を図ることのないよう必要な措置を定めることにより、公平、公正で市民に開かれ、民主的で信頼される市政の実現に資することを目的とする。
(市長及び議員の責務)
第2条 市長及び議員は、市民全体の奉仕者として、市政に携わる責務を深く自覚し、地方自治の本旨に従って、その使命の達成に努めなければならない。
(市民及び事業者の責務)
第3条 市民は、主権者として市政を担い、公共の福祉を実現する自覚を持ち、市長及び議員に対し、その権限又は地位による影響力を不正に行使するよう求めてはならない。
2 事業者(個人が経営又は運営しているものを含む。以下同じ。)は、自己又は特定の者の利益を図るために、市長及び議員に対し、その権限又は地位による影響力を不正に行使するよう求めてはならない。
(政治倫理基準)
第4条 市長及び議員は、次に掲げる政治倫理基準を遵守しなければならない。
⑴ 市民全体の奉仕者としての品位と名誉を保持し、それを損なうような一切の行為を慎み、その職務に関して不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと。
⑵ 常に市民全体の利益をその指針として行動するものとし、その地位を利用していかなる金品も授受しないこと。
⑶ 市(市が資本金、基本金その他これらに準ずるものを出資し、又は拠出している一般社団法人、一般財団法人及び株式会社を含む。)が行う工事等(下請工事を含む。)の請負契約、業務委託契約及び物品納入契約並びに地
方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第244条の2
第3項に規定する指定管理者の指定(以下これらを「請負契約等」という。)
に関して特定の事業者について有利な取り計らいをしないこと。
⑷ 市職員の公正な職務執行を妨げ、又はその職権を不正に行使するよう求めないこと。
⑸ 市職員の採用に関して推薦又は紹介をしないこと。
⑹ 議員は、市職員の昇格、異動等に関して推薦をしないこと。
2 市長及び議員は、政治倫理に反する事実があるとの疑惑を持たれたときは、自ら潔い態度をもって疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明らかにしなければならない。
(市との請負契約等に関する遵守事項)
第5条 市長又は議員が役員をし、若しくは実質的に経営に携わっている事業者(市が資本金、基本金その他これらに準ずるものの2分の1以上を出資している法人等を除く。)及び市長又は議員の配偶者若しくは2親等内の親族が経営する事業者は、法第92条の2、第142条及び第169条の規定の趣旨を尊重し、すべての請負契約等を辞退し、市民に疑惑の念を生じさせないよう努めなければならない。
2 前項に規定する実質的に経営に携わっている事業者とは、次に掲げるものをいう。
⑴ 市長又は議員が資本金その他これらに準ずるものの3分の1以上を出資している法人等
⑵ 市長又は議員が年額300万円以上の報酬(顧問料等その名目を問わな
い。)を受領している法人等
⑶ 市長又は議員がその経営方針又は主要な取引に関与している法人等
3 前2項の規定に該当する事業者は、当該市長又は議員の任期開始の日から30日以内に、市長に辞退届を提出するものとする。
4 市長又は議員の任期中、新たに第1項の規定に該当する事業者については、前項の規定を準用する。この場合において、同項中「当該市長又は議員の任期開始の日」とあるのは、「当該事由の生じた日」と読み替えるものとする。
5 市長は、前2項の規定による辞退届について、八王子市議会議長(以下「議
長」という。)にその写しを送付するとともに、辞退届の提出状況を、速やか
に公表しなければならない。
(兼業・兼職等報告書の提出)
第6条 市長は、継続的に一定の収益事業を行っている事業者の役員、顧問その他の職(以下次項において「役員等」という。)に就いている場合には、報酬の有無を問わず、当該事業者の名称及び住所並びに当該職名(当該事業者に出資しているときは当該事業者の全出資金等に占める出資の割合を含む。)を記載した兼業・兼職報告書を市長の任期開始の日から起算して30日以内に作成しなければならない。
2 議員は、八王子市競争入札参加資格者名簿に登載されている事業者又は市から指定管理者の指定を受けている事業者の役員等に就いている場合には、報酬の有無を問わず、当該事業者の名称及び住所並びに当該職名(当該事業者に出資しているときは当該事業者の全出資金等に占める出資の割合を含む。)を記載した兼業・兼職報告書を議員の任期開始の日から起算して30日以内に議長に提出しなければならない。
3 前2項の規定により提出した兼業・兼職報告書の内容に変更がある場合(新たに該当事由が生じた場合を含む。)は、当該変更すべき事由が生じた日から30日以内に、市長にあっては兼業・兼職変更報告書を作成し、議員にあっては兼業・兼職変更報告書を議長に提出しなければならない。
4 議長は、前2項の規定により提出された兼業・兼職報告書又は兼業・兼職変更報告書(以下「兼業・兼職報告書等」という。)の写しを速やかに市長に送付しなければならない。
5 市長は、前各項に定める兼業・兼職報告書等を速やかに一般の閲覧に供しなければならない。
6 市長は、兼業・兼職報告書等の写しを次条に定める審査会に提出し、審査を求めなければならない。
(政治倫理審査会の設置)
第7条 政治倫理に関する事項を調査審議するため、市長の附属機関として、八王子市政治倫理審査会(以下「審査会」という。)を置く。
2 審査会の委員は、7人以内とし、弁護士、司法書士、税理士、公認会計士等
専門的知識を有する者及び地方行政に関し識見を有する者並びに市民(法第1
8条に定める選挙権を有する者に限る。以下第10条第1項及び第14条第4項において同じ。)のうちから、市長が議会の同意を得て委嘱する。
3 審査会の委員は、地方公共団体の長若しくは議員又は政党その他の政治団体の役員を兼ねることはできない。
4 審査会の委員の任期は2年とし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げないが、2期を限度とする。
5 審査会の会議は、公開するものとする。ただし、やむを得ず非公開とするときは、委員定数の3分の2以上の同意を必要とする。
(会長及び副会長)
第8条 審査会に会長及び副会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 会長は、審査会を代表し、会務を総理する。
3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき又は欠けたときは、その職務を代行する。
(審査会の職務)
第9条 審査会は、次に掲げる職務を行う。
⑴ 第6条に定める兼業・兼職報告書等を審査し、意見書を市長に提出すること。
⑵ 次条に定める市民の調査請求について必要な調査を行い、意見書を市長に提出すること。
⑶ 第14条に定める説明会の適否について意見書を市長に提出すること。
⑷ その他この条例による政治倫理の確立を図るため、市長の諮問を受けた事項について調査し、答申し、勧告し、又は建議すること。
2 審査会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
(市民の調査請求権)
第10条 市民は、市長又は議員について次の各号に掲げる事由があるときは、これを証する資料を添えて、市長に係るものについては市長に、議員に係るものについては議長に調査を請求することができる。
⑴ 第4条に定める政治倫理規準に違反する疑いがあるとき。
⑵ 第5条に定める請負契約等の辞退に違反する疑いがあるとき。
⑶ 第6条に定める兼業・兼職報告書等に疑義があるとき。
2 前項の規定により調査の請求を受けたときは、議長は、議員に係る調査請求書の写しを速やかに市長に送付し、市長は、市長又は議員に係る調査について審査会に諮問しなければならない。
(意見の聴取等)
第11条 審査会は、市長から諮問を受けた事項の調査のため必要があると認めたときは、市長又は議員の出席を求め、意見若しくは説明を聴き、又は必要な資料の提出を求めることができる。
2 審査会は、議員に係る調査請求が行われた場合、調査に当たって必要があると認めたときは、政治倫理の確立のための八王子市長の資産等の公開に関する条例(平成7年条例第27号)の規定を準用し、当該議員に対し資産等報告書の提出を求めることができる。
(市長及び議員の協力義務)
第12条 市長及び議員は、審査会の要求があるときは、審査に必要な資料を提出し、又は会議に出席して意見を述べなければならない。
2 審査会は、市長又は議員が資産等報告書等の提出の拒否又は遅延、虚偽の報告若しくは調査非協力等の事実があったときは、これを速やかに市長に報告し、市長はその報告内容を公表しなければならない。
(意見書の提出等)
第13条 審査会は、調査終了後、速やかに市長に意見書を提出しなければならない。
2 市長は、前項の意見書が提出されたときは、速やかにその写しを、議長及び調査請求人又は第14条第4項に定める説明会開催請求人に送付するとともに、一般の閲覧に供しなければならない。
(職務関連犯罪容疑による逮捕、起訴後の説明会)
第14条 市長は、刑法(明治40年法律第45号)第197条から第197条の4までの規定及び第198条に定める罪並びに公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成12年法律第130号)に定める罪その他職務に関連する犯罪(以下「職務関連犯罪」という。)の容疑により逮捕され、又は起訴された後、引き続きその職にとどまろうとするときは、市民
に対する説明会を開催することができる。
2 議員は、職務関連犯罪の容疑により逮捕され、又は起訴された後、引き続きその職にとどまろうとするときは、市民に対する説明会の開催を議長に求めることができる。
3 議長は、前項の説明会の開催要求があったときは、市長にその写しを速やかに送付しなければならない。
4 市民は、第1項及び第2項の規定による説明会が開催されないときは、50人以上の連署をもって、説明会の開催を市長に係るものにあっては市長に、議員に係るものにあっては議長に請求することができる。
5 議長は、前項の議員に係る説明会の開催請求があったときは、市長にその写しを速やかに送付しなければならない。
6 市長は、第4項の開催請求について、審査会に諮問しなければならない。
7 市長は、審査会が前項の諮問に対し説明会の開催を適当とする意見書を提出したときは、議員に係るものについては議長に意見書の写しを送付するとともに、説明会を開催しなければならない。この場合において、当該市長又は議員は、説明会に出席し、釈明するものとする。
(職務関連犯罪容疑による1審有罪判決後の説明会)
第15条 市長は、職務関連犯罪により1審有罪判決の宣告を受けた後、引き続きその職にとどまろうとするときは、市民に対する説明会を開催し、出席して釈明しなければならない。
2 議員は、職務関連犯罪により1審有罪判決の宣告を受けた後、引き続きその職にとどまろうとするときは、市民に対する説明会の開催を議長に求めなければならない。
3 議長は、前項の説明会の開催請求があったときは、市長にその写しを速やかに送付しなければならない。
4 市長は、前項の開催請求書が送付されたときは、説明会を開催しなければならない。
5 議員は、前項の説明会に出席し、釈明しなければならない。
(委任)
第16条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、市規則で定める。
附 則
1 この条例は、公布の日から6月を超えない範囲内において市規則で定める日(以下「施行日」という。)から施行する。
2 この条例の施行の際、現に市長又は議員である者の第5条の規定の適用につ
いては、同条第3項中「当該市長又は議員の任期開始の日」とあるのは、「こ
の条例の施行の日」とする。
3 この条例の施行の際、現に市と契約関係にある事業者の第5条の規定は、契約期間(指定管理者にあっては指定期間)中は適用しない。
4 この条例の施行の際、現に市長又は議員である者の第6条の規定の適用については、同条第1項中「市長の任期開始の日」とあるのは「この条例の施行の日」とし、同条第2項中「議員の任期開始の日」とあるのは「この条例の施行の日」とする。
5 第10条第1項の調査請求は、施行日以後の事案について適用するものとする。
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